システム開発を検討しているものの、
「作りたいシステムがまだ具体的に決まっていない」
「必要な機能を整理できていない」
「Excel業務をシステム化したいが、何を開発会社へ伝えればよいか分からない」
という状態で、相談してよいのか迷うことがあります。
結論から言えば、要求が完全に固まっていない状態でも、システム開発の相談は可能です。
むしろ業務システムの開発では、最初から詳細な機能や画面仕様まですべて決まっているケースばかりではありません。
例えば、
Excelで管理している在庫情報をWeb上で管理したい
顧客情報が複数のファイルに分散しているため一元管理したい
毎月数時間かかっている集計作業を自動化したい
といった段階から相談し、現在の業務や課題を整理しながら必要なシステムを具体化していくことができます。
この「何を実現したいのか」を整理する工程が、システム開発における要求整理です。
この記事では、要求整理とは何か、要求が曖昧でも相談できる理由、相談前に整理しておきたい項目、要求整理から要件定義へ進む方法まで解説します。
要求整理とは
要求整理とは、システムの具体的な機能や技術を決める前に、利用者や企業が何を実現したいのかを整理することです。
例えば、
顧客検索機能が欲しい
という要望があったとします。
しかし、これだけでは本当に顧客検索機能が必要なのか判断できません。
詳しく話を聞くと、
顧客情報が担当者ごとのExcelに分散しており、問い合わせがあったときに過去の情報を探すのに時間がかかっている
という問題があるかもしれません。
その場合、本来の要求は、
顧客情報を一元管理し、担当者以外でもすぐに過去の情報を確認できるようにしたい
となります。
要求整理では、いきなり機能を決めるのではなく、
現状 → 課題 → 実現したい状態 → 必要な仕組み
という順番で考えることが重要です。
要求整理と要件定義の違い
システム開発では「要求」と「要件」という言葉が使われます。
似ていますが、意味は少し異なります。
要求とは
要求は、利用者や発注者が何を実現したいのかを表します。
例えば、
営業部全体で顧客情報を共有できるようにしたい
という内容です。
要件とは
要件は、その要求を実現するために、システムとして何を満たす必要があるのかを具体化したものです。
例えば、
- 顧客情報を登録できる
- 顧客名で検索できる
- 顧客ごとの対応履歴を確認できる
- 営業担当者を設定できる
- 担当者以外も閲覧できる
などです。
基本的には、
要求整理 → 要件定義 → 設計 → 開発
という流れで具体化していきます。
要求が曖昧でもシステム開発を相談できる理由
開発会社へ相談する前に、要件定義書や仕様書を完成させる必要はありません。
システム開発に詳しくない企業が、
- データベース構成
- API
- クラウド
- サーバー構成
- プログラミング言語
- フレームワーク
まで決めるのは現実的ではありません。
むしろ、技術的な内容まで先に決めてしまうことで、最適ではない方法を前提に開発を進めてしまう可能性があります。
相談段階で重要なのは、技術的な仕様よりも現在の業務と課題を説明できることです。
例えば、
毎月20人分の売上データをExcelで集計しており、担当者が2日程度かけて月次報告書を作成しています。この作業を効率化したいです。
と伝えられれば、開発側では、
- データ入力を統一する
- データベースへ一元化する
- 集計を自動化する
- ダッシュボードを作る
- 帳票を自動生成する
などの方法を検討できます。
「どう作るか」は開発側と相談しながら決められます。
システム開発の相談前に整理したい7項目
要求がまだ曖昧でも、次の7項目を整理しておくと相談が進みやすくなります。
1.なぜシステム化したいのか
最初に整理したいのが、システム開発の目的です。
例えば、
- Excel管理に限界を感じている
- 二重入力をなくしたい
- 入力ミスを減らしたい
- 作業時間を短縮したい
- 情報を一元管理したい
- 属人化をなくしたい
- 複数拠点から情報を確認したい
などです。
単に、
在庫管理システムを作りたい
とするのではなく、
店舗ごとにExcelで管理している在庫を一元管理し、本部からリアルタイムで確認できるようにしたい
まで整理できると、要求が明確になります。
2.現在どのような業務をしているか
次に現在の業務を整理します。
例えば在庫管理なら、
商品が入荷する
↓
担当者がExcelへ入力する
↓
商品を販売する
↓
別のExcelへ出庫を入力する
↓
週末に在庫数を集計する
という流れです。
現在の業務が分からなければ、どこをシステム化すればよいのか判断できません。
完璧な業務フロー図を作る必要はありません。
まずは日常的に行っている作業を順番に書き出すだけでも十分です。
3.何に困っているのか
現在の業務で発生している問題を整理します。
例えば、
- ファイルが複数存在する
- どのファイルが最新版か分からない
- 同じ情報を何度も入力している
- 入力ミスが発生する
- 集計作業に時間がかかる
- 担当者しか業務内容を把握していない
- 過去のデータを探すのに時間がかかる
などです。
具体的な課題が分かるほど、本当に必要な機能を考えやすくなります。
4.誰が利用するのか
システムの利用者も重要です。
例えば、
- 営業担当者10人
- 営業管理者2人
- 経理担当者3人
- システム管理者1人
などです。
また、
- 社内だけで利用する
- 顧客も利用する
- 取引先も利用する
- 複数拠点から利用する
といった条件によっても設計は変わります。
利用者ごとに操作できる範囲を変える場合は、権限管理も必要になります。
5.どのような情報を扱うのか
システムで管理したい情報も整理します。
例えば顧客管理システムなら、
- 顧客名
- 住所
- 電話番号
- メールアドレス
- 担当者
- 案件情報
- 対応履歴
- 添付ファイル
などです。
現在使っているExcelやCSVがあれば、開発会社へ見せると話が進みやすくなります。
既存のExcelは、システム化する際の重要な資料になります。
6.予算感
相談時点で正確な開発費が分からなくても問題ありません。
ただし、
- 100万円以内
- 300万円程度
- 500万円程度
- まずは小規模に始めたい
など、おおよその予算感があると提案しやすくなります。
システム開発では、同じ課題でも予算によって実現方法が変わります。
例えば予算を抑えるなら、すべてを独自開発するのではなく、
- 既存SaaSを活用する
- GoogleスプレッドシートとGASを組み合わせる
- 必要な部分だけWebシステム化する
といった方法も考えられます。
7.いつまでに利用したいのか
導入希望時期も重要です。
例えば、
10月から新しい業務へ切り替えたい
来年度から利用したい
繁忙期が始まる前に導入したい
などです。
業務上の期限がある場合は、相談時に伝えます。
納期が短い場合は、最初からすべての機能を開発するのではなく、重要な機能だけ先にリリースする方法もあります。
相談時点では決めなくてもよいこと
反対に、最初の相談時点では決める必要がないものもあります。
例えば、
- JavaかPythonか
- ReactかVueか
- PostgreSQLかMySQLか
- AWSかAzureか
- APIの方式
- データベースのテーブル構成
- サーバー構成
などです。
社内の技術標準など特別な制約がある場合は伝える必要がありますが、そうでなければ要求を整理した後に開発側から提案してもらえます。
システム開発を相談するときに重要なのは、技術を選ぶことではなく、解決したい課題を明確にすることです。
「欲しい機能一覧」がなくても相談できる
システム開発相談というと、
「必要な機能をすべて整理してから問い合わせなければならない」
と考えるかもしれません。
しかし最初は、
現在こういう業務をしています。
ここに時間がかかっています。
この状態を改善したいです。
という説明でも構いません。
例えば顧客管理なら、
現状
顧客情報を営業担当者ごとのExcelで管理している。
課題
担当者が休むと他の人が顧客への対応状況を確認できない。
実現したい状態
営業部全体で顧客情報と対応履歴を確認できるようにしたい。
ここまで整理できれば、
- 顧客管理
- 案件管理
- 対応履歴
- 担当者管理
- 権限管理
など、必要な機能を開発側と一緒に考えることができます。
要求整理の進め方7ステップ
実際に要求整理を行う場合は、次のような流れで進めます。
STEP1|現在の業務を整理する
まずAs-Is、つまり現在の業務を整理します。
「現在どのような手順で仕事をしているのか」を確認します。
STEP2|問題点を洗い出す
業務ごとに、
- 時間がかかる
- ミスが多い
- 二重入力している
- 属人化している
- 情報共有できない
といった問題を洗い出します。
STEP3|理想の状態を考える
問題を解消した結果、どうなってほしいのかを整理します。
例えば、
- 入力を1回にしたい
- リアルタイムで確認したい
- 担当者以外でも確認できるようにしたい
- 月次集計を自動化したい
などです。
STEP4|利用者を整理する
誰がシステムを利用するのか、利用者ごとに何を行うのかを整理します。
STEP5|要求を文章化する
例えば、
営業部門で顧客・案件情報を一元管理し、担当者以外でも最新の対応状況を確認できるようにする。
という形です。
STEP6|優先順位を付ける
すべての要求を一度に実現する必要はありません。
- 必須
- できれば必要
- 将来的に追加
などに分けます。
STEP7|機能要件へ落とす
最後に要求を具体的な機能へ落とし込みます。
例えば、
要求:
営業部内で顧客情報を共有したい。
機能要件:
- 顧客を登録できる
- 顧客を検索できる
- 顧客詳細を確認できる
- 対応履歴を登録できる
- 担当者を設定できる
という流れです。
要求整理では「欲しい機能」より「なぜ必要なのか」を確認する
要求整理で特に重要なのが、機能の背景を確認することです。
例えば現場から、
CSV出力機能が欲しい
と言われたとします。
そのままCSV出力を開発するのではなく、
なぜCSVが必要なのですか?
と確認します。
すると、
毎月CSVを作成して会計システムへ入力しているからです
という回答があるかもしれません。
この場合、本当に解決したい問題は、
会計システムへの入力作業を減らしたい
ということです。
解決方法はCSV出力だけではありません。
場合によっては、
- CSV出力
- CSV自動生成
- API連携
- データ自動連携
など、別の方法も考えられます。
要求整理では、手段と目的を分けて考えることが重要です。
現在使っているExcelや帳票は重要な資料
要求整理のために、新しい資料を一から作る必要はありません。
現在使用している、
- 顧客管理Excel
- 在庫管理表
- 請求書
- 申請書
- 月次レポート
- 業務マニュアル
- 紙帳票
- 既存システムの画面
などは、そのまま要求整理の資料になります。
例えばExcelの列を確認するだけでも、
「現在どの情報を管理しているのか」
を把握できます。
システム開発の相談前には、新しい資料を完璧に作るよりも、現在使っている資料を集めておくことが有効です。
要求整理の具体例|在庫管理システム
在庫管理を例に考えてみます。
現状
各店舗がそれぞれ別のExcelで在庫を管理している。
課題
本部では各店舗の最新在庫を確認できない。
毎週、各店舗からExcelを集めて集計している。
要求
本部と店舗が同じ在庫情報を確認できるようにしたい。
必要な機能候補
- 商品管理
- 店舗管理
- 在庫一覧
- 入庫登録
- 出庫登録
- 在庫調整
- 店舗別在庫表示
- 権限管理
このように、いきなり「在庫管理システムを作る」と考えるのではなく、現状と課題から必要な機能を導きます。
要求整理の具体例|顧客・案件管理システム
現状
営業担当者ごとに顧客情報をExcelで管理している。
課題
担当変更時の引き継ぎが難しい。
管理者が案件状況を集計するのに時間がかかる。
要求
顧客・案件情報を営業部門全体で共有したい。
必要な機能候補
- 顧客一覧
- 顧客登録
- 顧客詳細
- 案件管理
- 対応履歴
- 担当者管理
- ステータス管理
- 検索
ここまで整理できれば、その後は画面一覧やプロトタイプへ進めます。
要求整理の具体例|申請・承認業務
現状
Excelで申請書を作成し、メールで上司へ送信している。
課題
申請が誰のところで止まっているのか分からない。
メールに古いExcelファイルが残り、最新版が分からなくなる。
要求
申請・承認状況をシステム上で確認できるようにしたい。
必要な機能候補
- 申請登録
- 承認
- 差し戻し
- ステータス表示
- 承認履歴
- 通知
- 申請検索
このように業務を分解すると、必要なシステムが具体化していきます。
【コピペ用】システム開発の要求整理シート
システム開発を相談する前に、以下を埋められる範囲で整理しておくと便利です。
基本情報
システム化したい業務:
利用部署:
利用予定人数:
現在利用しているシステム・Excel:
開発目的
なぜシステム化したいか:
改善したいこと:
現在の業務
業務の開始:
主な作業:
業務の終了:
関係する担当者:
現在の課題
時間がかかる作業:
ミスが多い作業:
二重入力:
属人化している作業:
その他の課題:
実現したい状態
システム導入後にどうなってほしいか:
必須だと思う機能
–
あれば便利な機能
–
データ
現在保有しているデータ:
Excel:
CSV:
既存システム:
外部連携
連携したいシステム:
予算
予算感:
スケジュール
希望開始時期:
希望リリース時期:
未決事項
分からないこと:
相談したいこと:
要求整理でよくある失敗
失敗1|最初から機能一覧だけを作る
業務課題を確認せず、
- 顧客検索
- CSV出力
- AI
- ダッシュボード
と機能だけを並べても、本当に必要なのか判断できません。
まずは「なぜ必要なのか」を整理します。
失敗2|管理者だけで決める
管理者が考えている業務と、現場で実際に行われている業務が異なることがあります。
システムを実際に使う担当者へのヒアリングも重要です。
失敗3|理想だけ伝えて現状を説明しない
「全部自動化したい」
だけでは、何を自動化すればよいのか判断できません。
現在どのような作業を行っているのかも伝えます。
失敗4|技術を先に決める
「AIを使いたい」
「AWSで作りたい」
「Pythonで開発したい」
など、技術から考え始めるケースがあります。
しかし、技術は課題を解決するための手段です。
まず業務課題を整理します。
失敗5|すべての要望を必須にする
予算や納期には限りがあります。
要求には優先順位を付け、
- 必須
- 重要
- 将来追加
などに分けると開発範囲を決めやすくなります。
要求が曖昧な場合、見積はどうなる?
要求が曖昧な状態では、正確な固定見積を出すのが難しい場合があります。
例えば、
顧客管理システムを作りたい
だけでは、
- 5画面なのか
- 50画面なのか
- 社内だけで使うのか
- 顧客も使うのか
- 外部システムと連携するのか
が分かりません。
そのため、
- まず概算見積を出す
- 要件定義を先に実施する
- 小規模なプロトタイプを作る
- 要求整理だけ先に行う
といった進め方があります。
要求を具体化してから本開発の見積を行うことで、後から大きな追加費用が発生するリスクを減らしやすくなります。
要求整理から相談した方がよいケース
特に次のような場合は、要求整理の段階から相談する方法が向いています。
- Excel業務をシステム化したい
- 現在の業務フローが複雑
- 複数部署が関係している
- 欲しい機能を決められない
- 予算内でどこまで作れるか知りたい
- システム開発経験者が社内にいない
- 何を開発会社へ伝えればよいか分からない
- そもそもシステム化すべきか分からない
完成した仕様書を作ってから相談するよりも、業務整理・要求整理から対応できる相手へ相談する方が進めやすい場合があります。
要求整理の相談先を選ぶポイント
開発会社やエンジニアへ要求整理から相談する場合は、
- 業務ヒアリングに対応できるか
- 要件定義から対応できるか
- すぐ実装へ進まず課題を整理してくれるか
- 技術以外の方法も提案できるか
- 予算に応じて開発範囲を調整できるか
- 将来的な機能追加も考えて設計できるか
などを確認するとよいでしょう。
例えば、
この部分は既存SaaSを利用し、この業務だけ独自システムにする
という提案ができれば、すべてを独自開発するより費用を抑えられる可能性があります。
要求整理に関するよくある質問
要件が全く決まっていなくても相談できますか?
相談可能です。
ただし、
「現在どのような業務をしているのか」
「何に困っているのか」
「どう改善したいのか」
が分かると、要求整理を進めやすくなります。
要求整理は自社で行うべきですか?
自社だけでも整理できますが、システム化を前提とする場合は開発経験者と一緒に整理する方法もあります。
業務については自社が詳しく、システムによる解決方法については開発側が詳しいため、双方で整理するのが効果的です。
要求整理にはどんな資料が必要ですか?
現在使用している、
- Excel
- 帳票
- CSV
- マニュアル
- 既存システムの画面
- 業務フロー
などが役立ちます。
新しい資料を一から作る必要がない場合もあります。
技術が全く分からなくても相談できますか?
問題ありません。
プログラミング言語やクラウドなどを発注者側で決める必要はありません。
重要なのは、自社の業務・課題・目的を説明することです。
hiro-dev-labでは要求整理から相談できます
hiro-dev-labでは、Webシステム・業務システムについて、すでに完成した仕様書がある案件だけでなく、開発前の要求整理から相談できます。
例えば、
- 現状業務のヒアリング
- Excel・帳票の確認
- 現在の業務フロー整理
- 業務課題の洗い出し
- システム導入後の業務整理
- 要求整理
- 業務要件・機能要件整理
- 開発範囲・優先順位整理
- 画面一覧・プロトタイプ作成
- Webシステム設計・開発
といった流れで対応できます。
例えば、
Excel業務をシステム化したいが、どんな機能が必要なのか分からない
という段階でも、
現状業務 → 課題 → 要求 → 要件 → 開発範囲
の順番で整理できます。
まとめ|要求が曖昧なら「決めてから相談」ではなく「整理するために相談する」
システム開発では、
「必要な機能をすべて決めてから開発会社へ相談しなければならない」
と考える必要はありません。
まず整理したいのは、
- なぜシステム化したいのか
- 現在どのような業務をしているのか
- 何に困っているのか
- 誰が利用するのか
- どのような状態にしたいのか
- 予算はどの程度か
- いつまでに利用したいのか
です。
そこから、
要求 → 業務要件 → 機能要件 → 画面 → 開発範囲
へ具体化していきます。
要求が曖昧なこと自体は問題ではありません。
注意したいのは、要求が曖昧なまま設計・開発を始めてしまうことです。
「作りたいものをまだ言語化できていない」
「Excel業務をどのようにシステム化すればよいか分からない」
「要件定義書を作る前から相談したい」
「予算に合わせて必要な機能を整理したい」
という段階からでも、システム開発の相談は可能です。
要求がまだ固まっていない場合は、完成した仕様書を作ることから始めるのではなく、まず現在の業務と課題を整理するところから始めてみてください。