「申請書を紙で回している」
「Excelで申請内容を管理しているが、誰が承認したのか分からなくなる」
「社長や上司の承認待ちで仕事が止まる」
こうした課題が増えてきた中小企業では、ワークフローシステムの導入を検討するタイミングかもしれません。
ワークフローシステムとは、経費申請、稟議、休暇申請、購買申請などの「申請→確認→承認」という業務の流れをシステム上で管理する仕組みです。
結論からいうと、中小企業がワークフローシステムを導入すべきなのは、単に社員数が増えたときではありません。
次のような状況が発生し始めたときが、一つの導入タイミングです。
- 承認待ちによって業務が止まる
- 紙やExcelによる申請管理が増えている
- 誰が承認したのか確認するのに時間がかかる
- 申請方法が部署や担当者によって違う
- テレワークや複数拠点への対応が必要になった
- 申請データを後から集計したい
- 管理者しか業務ルールを把握していない
この記事では、中小企業がワークフローシステムを導入すべきタイミングやメリット、導入前に整理しておきたいポイント、具体的な導入方法まで解説します。
ワークフローシステムとは
ワークフローシステムとは、社内で行われている申請・確認・承認の流れを電子化するシステムです。
例えば、備品を購入するときに次のような手続きをしている会社を考えてみます。
- 担当者が購入申請書を作成する
- 課長が内容を確認する
- 部長が承認する
- 経理担当者が発注する
- 購入履歴を保存する
紙やExcelで管理している場合、申請書をメールで送ったり、共有フォルダへ保存したり、承認後に別の管理表へ転記したりする必要があります。
ワークフローシステムを導入すると、
「申請する」
↓
「上司へ自動通知」
↓
「承認する」
↓
「次の担当者へ自動通知」
↓
「承認履歴を保存する」
という流れを一つのシステム上で管理できます。
ワークフローシステムで電子化できる業務
代表的なものには次のような業務があります。
- 稟議申請
- 経費申請
- 交通費申請
- 有給休暇申請
- 残業申請
- 出張申請
- 備品購入申請
- 契約書確認
- 見積承認
- 値引き承認
- 採用申請
- アカウント発行申請
- 各種社内申請
会社独自の申請業務についても、Webシステムとしてワークフローを構築することで電子化できます。
中小企業にワークフローシステムは必要なのか
すべての中小企業に、すぐワークフローシステムが必要というわけではありません。
例えば、社員が数名しかおらず、
「申請者から社長へ直接確認する」
だけで業務が完結しているのであれば、システムを導入することで逆に手間が増える可能性があります。
一方で、会社の成長に伴って申請件数や承認者が増えてくると、口頭・紙・メール・Excelだけでは管理しにくくなります。
重要なのは会社の規模ではなく、
現在の申請・承認業務によって、どの程度の手間や待ち時間が発生しているか
です。
特に、毎月繰り返し発生する業務であれば、一回あたり数分の無駄でも年間では大きな作業時間になります。
中小企業がワークフローシステムを導入すべき7つのタイミング
では、具体的にどのような状態になったらワークフローシステムを検討すべきなのでしょうか。
1. 承認待ちで業務が止まるようになった
最も分かりやすいサインが「承認待ち」です。
例えば、
- 上司が外出している
- 社長が出張している
- メールに申請が埋もれている
- 誰が承認するのか分からない
といった理由によって、申請が数日間止まるケースがあります。
ワークフローシステムでは、承認者に通知を送り、スマートフォンやPCから承認できる仕組みを作れます。
さらに、
「3万円未満は課長承認」
「3万円以上は部長承認」
「100万円以上は社長承認」
といった条件分岐も設定できます。
申請金額や内容に応じて承認経路を自動的に変更すれば、担当者が毎回「誰に確認すればよいか」を判断する必要もなくなります。
2. 紙の申請書が増えてきた
紙の申請書には、想像以上に多くの付随作業があります。
例えば、
- 印刷する
- 記入する
- 上司へ渡す
- 承認印をもらう
- 次の担当者へ渡す
- ファイルへ保管する
- 必要になったときに探す
という作業です。
申請書が月に数件しかなければ大きな問題になりません。
しかし、毎月数十件、数百件と増えてくると、紙を管理するための作業そのものが業務になります。
ワークフローシステムへ移行すれば、申請から保存までオンライン上で完結できます。
3. Excelによる申請管理に限界を感じている
中小企業ではExcelを使って申請や管理を行っているケースも多くあります。
Excel自体に問題があるわけではありません。
少人数で管理するのであれば、低コストで柔軟性が高い優れたツールです。
ただし、利用者が増えると次のような問題が起こりやすくなります。
- 最新ファイルが分からない
- 誰かが編集中で開けない
- 同じデータを複数人が入力する
- 誤って数式を削除する
- ファイル名が「最新版最終修正版.xlsx」のようになる
- 承認履歴が残らない
- メールとExcelを行き来する
Excelで管理すること自体よりも、
Excelの周辺作業が増えてきたらシステム化を検討する
という考え方が重要です。
4. 社員数や部署が増えた
創業当初は、
「何かあれば社長に聞く」
という運用でも問題ありません。
しかし、
社員5人
↓
社員20人
↓
社員50人
と組織が大きくなるにつれて、すべての判断を一人へ集約することが難しくなります。
営業部、管理部、開発部など部署が増えれば、承認ルールも複雑になります。
そのため、組織拡大のタイミングは業務フローを整理する良い機会です。
システム導入だけを考えるのではなく、
「誰が何を申請し、誰がどの条件で承認するのか」
という社内ルールそのものを整理すると、その後の業務も管理しやすくなります。
5. テレワークや複数拠点で仕事をするようになった
紙の申請書は「同じ場所で働いている」という前提では運用しやすい方法です。
ところが、
- テレワーク
- 営業所
- 支店
- 倉庫
- 店舗
- 工場
など、複数の場所で働くようになると問題が発生します。
例えば、本社の承認印をもらうためだけに書類を郵送するケースもあります。
Web上のワークフローシステムであれば、場所に関係なく申請・承認できます。
複数拠点化やテレワーク導入は、ワークフローを見直す代表的なタイミングです。
6. 「その人しか分からない業務」が増えてきた
中小企業で特に注意したいのが業務の属人化です。
例えば、
「この申請は経理のAさんしか処理方法を知らない」
という状態です。
Aさんが休暇を取ったり退職したりすると、業務が止まってしまいます。
ワークフローをシステム化すると、
- 申請項目
- 承認者
- 処理手順
- ステータス
- 履歴
を仕組みとして管理できます。
システム化は単なる効率化ではなく、業務ルールを可視化する手段にもなります。
7. 申請データを経営や業務改善に使いたくなった
紙の場合、申請内容は保存できても集計には向いていません。
例えば、
「今年、備品購入にいくら使ったのか」
を調べるために、過去の申請書を一枚ずつ確認するのは現実的ではありません。
データとして保存していれば、
- 月別の経費
- 部署別の購入金額
- 申請件数
- 承認までの平均時間
- 差し戻し件数
などを集計できます。
CSVで出力してExcelで分析することもできますし、ダッシュボードとしてグラフ表示することもできます。
ワークフローシステムは、申請業務を効率化するだけでなく、業務データを蓄積する基盤にもなります。
ワークフローシステム導入前に確認したいチェックリスト
次の項目に複数当てはまる場合、ワークフローシステムを検討する価値があります。
【コピペ用】ワークフローシステム導入判断チェックリスト
- [ ] 紙の申請書を使用している
- [ ] Excelをメールで送って承認している
- [ ] 承認待ちで業務が止まることがある
- [ ] 申請の進捗状況が分からない
- [ ] 誰が承認したのか後から確認しにくい
- [ ] 部署によって申請方法が異なる
- [ ] 申請データを別のExcelへ転記している
- [ ] 同じ内容を複数システムへ入力している
- [ ] テレワークでは申請しにくい
- [ ] 支店や店舗から紙を送っている
- [ ] 特定の担当者しか処理方法を知らない
- [ ] 社員増加により申請件数が増えている
- [ ] 過去の申請書を探すことが多い
- [ ] 申請データを集計したい
重要なのはチェック数そのものではありません。
特に、
「毎日発生している」
「複数人が関わっている」
「転記作業がある」
という業務は、システム化による効果が出やすい傾向があります。
中小企業がワークフローシステムを導入するメリット
申請から承認までが速くなる
申請すると自動的に承認者へ通知できるため、紙を持って回る必要がありません。
現在どこで止まっているのかも確認しやすくなります。
承認履歴を残せる
「いつ」
「誰が」
「どの申請を」
「承認・差し戻ししたのか」
という履歴を保存できます。
後から経緯を確認する際にも役立ちます。
入力ミスを減らせる
システムでは入力項目にルールを設定できます。
例えば、
- 必須入力
- 数字のみ
- 日付形式
- 選択肢
- 金額上限
などです。
Excelや紙への自由入力と比較して、入力漏れや形式のばらつきを防ぎやすくなります。
転記作業を減らせる
申請フォームへ入力された情報を、そのままデータベースへ保存できます。
そのため、
申請書
↓
Excel管理表
↓
会計用CSV
のような二重入力・三重入力を減らせる可能性があります。
業務ルールを統一できる
システムを導入する際には、
「誰が申請するか」
「誰が承認するか」
「どの条件で承認ルートを変更するか」
を決めます。
結果として、これまで担当者の経験に依存していた業務ルールを整理できます。
ワークフローシステム導入で失敗しやすいケース
ワークフローシステムを入れれば自動的に業務が改善されるわけではありません。
システム導入前の業務整理が重要です。
現在の紙業務をそのままシステム化する
例えば現在、
課長
↓
次長
↓
部長
↓
本部長
↓
役員
という5段階承認を行っているとします。
これをそのままシステム化すれば、紙がWeb画面に変わるだけで、承認に時間がかかる問題は残ります。
システム化する前に、
「本当に5人全員の承認が必要なのか」
を検討する必要があります。
必要以上に機能を増やす
最初から、
- チャット
- AI
- 高度な分析
- 多数の外部システム連携
- 複雑な権限設定
などを盛り込むと、開発費用も運用負荷も増えます。
まずは、
「申請→承認→履歴保存」
など、最も困っている業務から始める方法もあります。
現場を確認せず管理者だけで仕様を決める
管理者から見た業務と、実際に申請を行う担当者から見た業務は異なることがあります。
例えば管理者は、
「申請書を書くだけ」
だと思っていても、現場では申請前に複数のExcelやメールから情報を集めているかもしれません。
そのため、システム導入前には実際の担当者へのヒアリングが重要です。
中小企業向けワークフローシステムはどう選ぶ?
導入方法は大きく分けると、
- 既製のクラウドサービスを利用する
- 自社向けにシステムを開発する
という選択肢があります。
一般的な申請ならクラウドサービスが向いている
例えば、
- 経費申請
- 有給申請
- 一般的な稟議申請
などであれば、既製のワークフローサービスで対応できる場合があります。
標準的な業務であれば、ゼロから開発するより低コストかつ短期間で導入できます。
独自業務が多い場合はシステム開発も選択肢になる
一方、
「自社独自の業務フローがある」
場合には、既製サービスでは対応しにくいことがあります。
例えば、
顧客から注文
↓
営業担当者が内容確認
↓
在庫確認
↓
上司承認
↓
倉庫へ出荷指示
↓
請求データ作成
というように、単純な申請・承認ではなく業務全体につながっているケースです。
このような場合には、
- 顧客管理
- 在庫管理
- 案件管理
- 申請・承認
- 帳票作成
- CSV出力
などを一つの業務システムとして構築した方が使いやすいこともあります。
ワークフローシステム導入は「ツール選び」より業務整理が重要
ワークフローシステムを検討すると、
「どのサービスを使えばよいか」
というツール比較から始めてしまいがちです。
しかし、その前に整理したいのが現在の業務です。
いわゆるAs-Is(現在の業務)を整理します。
例えば、
申請者
↓
Excel作成
↓
メール送信
↓
課長確認
↓
部長確認
↓
経理がExcelへ転記
という流れです。
次に、
「どの作業をなくしたいのか」
「どこを自動化したいのか」
を考えます。
これがTo-Be(システム導入後の理想的な業務)です。
例えば、
申請フォーム入力
↓
承認者へ自動通知
↓
Web上で承認
↓
データベースへ自動保存
↓
必要に応じてCSV出力
という形です。
このAs-IsとTo-Beを整理してからシステムを選ぶことで、
「システムを導入したが業務が楽にならなかった」
という失敗を防ぎやすくなります。
【具体例】Excelによる備品購入申請をシステム化する場合
中小企業でよくある備品購入を例に考えてみます。
現状
社員がExcelの購入申請書を作成。
↓
上司へメールで送信。
↓
上司が内容を確認して返信。
↓
経理担当者が別のExcel管理表へ入力。
↓
購入後、申請書を共有フォルダへ保存。
課題
この運用では、
- メールから過去の申請を探す
- Excelへ転記する
- 承認済みか確認する
- ファイルを整理する
といった作業が発生します。
要求
業務担当者へのヒアリングによって、例えば次のような要求を整理します。
- ブラウザから購入申請したい
- 上司へ自動通知したい
- 承認済みか確認したい
- 購入履歴を検索したい
- CSVで一覧を出力したい
システム化
システムでは、
申請フォーム
↓
承認通知
↓
承認・差し戻し
↓
購入処理
↓
完了
というステータスを管理します。
管理画面では、
- 申請者
- 申請日
- 品名
- 金額
- 承認状況
- 購入状況
などを一覧表示できます。
このように考えると、ワークフローシステムは単なる「電子ハンコ」ではなく、業務全体を管理する仕組みとして設計できます。
小さく始める方法もある
中小企業の場合、最初から全社業務をシステム化する必要はありません。
例えば、
最初は備品購入申請だけ
↓
次に経費申請
↓
次に見積承認
↓
次に案件管理と連携
というように段階的に拡張する方法があります。
特に自社向けにWebシステムを開発する場合は、最初に必要最小限の機能を構築し、実際に利用しながら改善する方法が有効です。
これはMVP(Minimum Viable Product:必要最小限の機能を備えた製品)という考え方にも近い進め方です。
ワークフローシステムに関するよくある質問
小規模な会社でもワークフローシステムは必要ですか?
社員数だけで判断する必要はありません。
10人程度の会社でも申請件数が多かったり、複数拠点で業務を行っていたりする場合は、導入効果が期待できます。
反対に、社員数が多くても申請業務がほとんどなければ、優先順位は低くなります。
現在どれだけ手作業や承認待ちが発生しているかで判断することが重要です。
Excelで管理できているならシステム化しなくてもよいですか?
現在問題なく管理できているのであれば、無理にシステム化する必要はありません。
ただし、
- 転記作業が増えた
- ファイル管理が難しい
- 同時編集が増えた
- 承認状況を確認できない
といった課題が増えてきた場合は検討のタイミングです。
紙の申請書をすべて廃止する必要がありますか?
必ずしも一度にすべて電子化する必要はありません。
業務頻度が高く、電子化による効果が大きい申請から段階的に移行することもできます。
既製サービスとオリジナルシステムはどちらがよいですか?
一般的な稟議・経費申請であれば、既製のクラウドサービスが適しているケースが多いでしょう。
一方、
- 自社独自の承認ルールがある
- 顧客管理や在庫管理と連携したい
- 特殊な帳票を出力したい
- 独自の業務フローをそのままシステム化したい
という場合は、自社向けの業務システム開発を検討する価値があります。
何を準備してから開発会社へ相談すればよいですか?
最初から詳細な仕様書を作る必要はありません。
最低限、
- 現在どのような業務をしているか
- 何に困っているか
- 誰が利用するか
- どの程度の頻度で発生するか
を整理しておくと相談しやすくなります。
「どんなシステムを作ればよいか分からない」という段階から、業務ヒアリングを通じて要求を整理することも可能です。
hiro-dev-labでは業務整理からワークフローシステム開発まで相談できます
ワークフローシステムを検討していても、
「どの業務をシステム化すればよいか分からない」
「既製サービスで十分なのか判断できない」
「現在のExcel業務をどうシステム化すればよいか分からない」
という企業も少なくありません。
hiro-dev-labでは、単に画面やシステムを作るだけではなく、現在の業務を確認しながら必要な仕組みを整理するところから相談できます。
例えば、
- 現在の業務フローのヒアリング
- As-Isの整理
- 課題の洗い出し
- To-Beの業務フロー整理
- 要求整理
- 要件定義
- 必要機能の整理
- 画面一覧の作成
- Webシステム設計・開発
- 既存Excel業務のシステム化
- 業務自動化
といった形で進められます。
ワークフローシステムは「紙をWeb画面に置き換えること」が目的ではありません。
現在の業務を整理し、不要な作業や待ち時間を減らすことが本来の目的です。
まとめ
中小企業がワークフローシステムを導入するタイミングは、社員数だけでは判断できません。
特に、
- 承認待ちが増えた
- 紙の申請書が増えた
- Excel管理が複雑になった
- 部署や社員数が増えた
- テレワークや複数拠点へ対応したい
- 業務が属人化している
- 申請データを活用したい
といった状況が出てきた場合は、業務フローを見直すタイミングです。
ただし、いきなりシステムを選ぶのではなく、
「現在どのように業務を行っているか」
「どこに手間がかかっているか」
「導入後にどうしたいか」
を整理することが重要です。
そのうえで、一般的な申請業務なら既製のワークフローサービス、自社独自の業務が多い場合にはオリジナルの業務システムというように、自社に合った方法を選ぶとよいでしょう。